請求の原因
第1 当事者
1原告
■■■■■(昭和■■年■■月■■日生。以下「原告」という、)は、平成27年10月27日に船橋中央クリニック(千葉県船橋市本町6-4-15。以下「本件クリニック」という。)において、陰茎の変形修正手術,陰茎リパス追加注入手術,亀頭部バイオアルカミド注入手術をうけたが、その結果亀頭の血流障害を生じて亀頭部分が壊死し,本件クリニックにおいて対処不能となったため、横浜市立市民病院に紹介されたが,最終的に亀頭が大きく変形・縮小し,日常の排尿に大きな困難をきたすにいたった者である。
2 被告
(1)医療法人社団セレス
医療法人社団セレス(千葉県船橋市本町六丁目4-15。以下「被告医療法人」という。)は,本件クリニックを運営する療法人社団である。)
(2)元神賢太
元神賢太(以下「被告元神医師」という。)は,被告医療法人の理事長であり、本件クリニックの院長として原告を診療した医師である。
第 2 前提となる医学的知見
1 亀頭増大術及び陰茎増大術
亀頭及び陰茎の皮下に充填物(filler)を注射して行われる(甲 B1)。近年その失敗が問題となっている(甲B2)。
2 パフオーム(バイオアルカミド)
イタリアのPolymekon 社(Brindisi,Italy)が製造した,皮下充填物(filler)で,3%のポリアクリルアミドの水懸濁液からなる。顔面脂肪委縮,ニキビ後の痕治療,漏斗胸,大殿筋萎縮,ニキビ後の瘢痕治療などに使われる(甲B3。以下この充填物を「バイオアルカミド」という。)。
一方で,バイオアルカミドは使用の当初から重篤な感染と,皮下での移動による顔の変形など,数多くの副作用が指摘されている。このため,カナダでは使用できなくなっており,最初の製造元での製造は停止されている(甲B4)。カナダでは製造者に対する訴訟が準備されている(甲B5)。
3リパス
PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)と Dextran(短鎖澱粉)からなる filler(甲B6。以下この充填物を「リパス」という。)。バイオアルカミド同様,組織壊死などの重篤なものを含む複数作用が報告されている(甲B7)。
4障害
味覚障害の原因・機序は必ずしも明らかでないが,様々な薬の長期使用によって引き起こされる可能性が公開されている。(甲B14・14頁)。
第3 診療の経過
1. 既往歴
原告は,本件クリニックも受診した平成27年10月27日の本件クリニック初診時において,数年前に亀頭にバイオアルカミドであるパーフォーム,陰茎にリパスを注入したことがあり,同日の診療の時点で亀頭には従前の注入剤のために硬結があり,陰茎は,リパスの影響でかなり曲がっていたことが確認されている(甲A1・1頁)。
2診療の経過
(1) 本件クリニックにおける手術
被告元神医師は,平成27年10月27日に,陰茎の変形修正(皮膚切開によりリパスの一部除去),陰茎へのリパスの追加注入(20cc),バイオアルカミド(3cc)の亀頭注入の手術を行った(甲A1・8頁,9頁。以下「本件手術」という。)
バイオアルカミド(商品名 Perform),リパス(商品名 LiPAS)に対しての一定の説明はなされ,その説明文書が手交されたが(甲A1・6頁,7頁),組織壊死等の重篤な副作用の説明はなかった。
(2)本件クリニックによる後遺症の治療
ア 平成27年10月31日(甲A1・1頁,9頁)
中代氏(中代氏の資格は明らかでないが,記載中に「Dr.より」との記載が認められることから,看護師と考えられ以下「中代看護師」という。
イ 平成27年11月1日
中代看護師が診察察し,ガス麻醉下で血液排出が行われ,抗炎症削軟膏,抗生剤軟膏による処置がなされた(甲A1・1頁、 9頁)。
ウ 平成27年11月2日(甲A1・9頁)
中代看護師が診察した。原告は,前日の痛みが強かったことを訴えた。ガス麻酔下で一部切開し,血液の排出がなされた。亀頭マッサージがなされた。プロスタグランジン製剤軟膏による処置がなされた。
工 平成27年11月3日(甲A1・10頁)
石橋氏(石橋氏の資格は明らかでないが,署名に「Ns.」というタイトルの記載があり,看護師と考えられる。以下「石橋看護師」という。石橋看護師も,診察,ガス麻酔,切開等
医療的措置を行っていることがうかがわれる。) が,亀頭全体が暗紫色であることを確認した。亀頭のマッサージ及びプロスタグランジン製剤軟膏による処置が行われた。
オ 平成27年11月4日(甲A1・11頁)
中代看護師が診察し,亀頭下部がほぼ黒色であることが確認された。亀頭マッサージが行われ、アルロニダーゼ(7cc)を注射された。被告元神医師が診察し、「平塚市民病院血管外科、整形外科Dr.に相談」と記載した。
カ 平成27年11月6日
中代着獲師が診察し,ガス麻酔下で亀頭マッサージを行い.ヒアルロニダーゼ(3cc)を注射,プロスタグランジン製剤軟膏による処置がなされた。
亀頭の色味が前日より改善しているとの記載がなされた。
キ 平成27年11月6日(甲A1・12頁)
原告は朝3時から痛みがあり,受診した。吉井氏(吉井氏の資格は明らかでないが,記載中に「Dr.より」との記載が認められることから,看護師と考えられる。以下「吉井看護師」という。尚吉井看護師は,診察,ガス麻酔,切開,皮下注等の医療的処置を行っていることがうかがわれる。ガス麻酔下で亀頭マッサージを行い,ヒアルロニダーゼ(3cc)を注射した。
ク 平成27年11月7日(甲A1・13頁)
原告は,痛みが2 日前より少し楽になった旨を述べた。市東氏(市東氏の資格は明らかでないが,中代看護師,吉井看護師との比較から,看護師と考えられる。以下「市東看護師」という。尚市東看護師は,診察,ガス麻酔,皮下注射,静脈注射,筋肉注射等の医療的処置を行っていることがうかがわれる。 ガス麻酔下で亀頭マッサージを行い(これは被告元神医師が行ったと記載されている。)ヒアルロニダーゼを皮下注射,パルクス(2ml)(甲B8。プロスタグランジン製剤であり血管拡張による血流増加作用を有する。)を
静脈注射,陣痛剤であるゾセゴンを、筋肉注射した。
ケ 平成27年11月8日
原告は前日の頭痛が一番痛かったと訴えた。市東看護師が診察に当たり、ガス麻酔で亀頭マッサージを行い、(これは被告元神医師が行われたと記載されている。)ヒアルロニダーゼ(2cc)を皮下注射,パルクス(2ml)を静脈注射し,プロスタグランジン製剤軟膏による処置がなされた。
コ平成27年11月9日(甲A1・14頁)
亀頭部の色の変化なく,痛みに変化はなかった。市東看護師が診察し,ヒアルロニダーゼ(1cc)を皮下注射,パルクス(2ml)を静脈注射,ソセゴン 1A(甲B9。鎮痛剤である。)を筋肉注射し,プロスタグランジン軟膏で処置した。被告元神医師がガス麻酔下で亀頭マッサージを行った。
サ 平成27年11月10日(甲A1・15頁)
口町氏(氏名の記載が読みづらく不正確な可能性がある。資格は不明だが看護師と思われる。以下「口町看護師」という。口町看護師は,診察,静脈注射,筋肉注射の医療的処置を行っていることがうかがわれる。)が,ガス麻酔下で診察し,パルクス(2ml)を静脈注射,ソセゴン 1Aを筋肉注射し,プロスタグランジン軟膏で処置した。
シ 平成27年11月11日(甲A1・14頁)
亀頭部の色に変化はなかった。中代看護師が,ガス麻酔下で診察し,パルクス(2ml)を静脈注射,ソセゴン 1Aを筋肉住射し,プロスタグランジン軟膏で処置した。陰茎部の抜糸をした。
第4 被告らの不法行為
第1 被告元神医師の過失
(1) 説明義務達反の過失
ア 被告元神医師の宣伝および説明の過失
前提となる医学的知見で述べた通り,バイオアルカミド,リパスとも,平成27年10月27日の時点で,組織壊死等の重篤な合併症が報告されているものであった。一方で元神医師は,本件クリニックにおいてバイオアルカミドの注入による亀頭増大術(甲B11),リパスの注入による陰茎の増大術(甲B12)を宣伝しているが,その宣伝には,メリットのみが記載されており,リスクの記載は一切ない。
イ 説明義務違反の過失
医師は,「手術や侵襲的な検査を行う場合には,その概要(執刀者及び助手の氏名を含む。),危険性,実施しない場合の危険性及び合併症の有無」を「丁寧に説明しなければならない」(甲B13)義務が存するところ,被告元神医師は,原告に対し,バイオアルカミド,リパスの注入に伴う,組織壊死等の重篤な合併症を何ら説明しなかった。
また,事前に原告に手交された BIO-ALCAMID(バイオアルカミド)注入治療同意書(甲A1・7頁),LiPAS 注入治療同意書(甲A1・6頁)にも,注入効果が永続しない,内出血や化膿がある等のリスクは記載されているが,組織壊死等の重篤な合併症については一切記載されていなかった。
したがって,被告元神医師の,説明義務違反の過失(以下「本件説明義務違反の過失」という。) は明らかである。
(2)本件手術の過失
ア 手術の実施を決定した過失
上記の通り,本件手術は,そもそも組織壊死等の重篇な合併症を伴う可能性のあるものであった。更に,組織壊死等の重篤な合併症は動脈の閉塞で生じるところ(甲B7・308頁),原告は本件手術前に亀頭にバイオアルカミド,陰茎にリパ
スを注入したことがあり(甲A1.1頁,5頁),既に組織内の微小動脈が圧迫され,また予想されない場所に動脈があり,動脈の閉塞が起こりやすい状況であったことが予想される。
たとえ美容形成的な手術であり,患者の希望があったとしても手術を行うか否かを決定する責任は医師にある。本件手術は,本来,合併症を生じる危険から行われるべきものではなかったが,被告元神医師は,合併症の危険をなんら考慮せず,漫然とこれを行ったものであるから,その過失(以下「本件手術実施決定の過失」という。)は明らかである。
イ 手術手技上の過失
本件手術は,体内にバイオアルカミドという異物を注入するものであり,誤って動脈に注入してこれを閉塞した場合,その末梢の組織壊死を来してしまうものであるから,手術に
当たる医師は,細心の注意をもってこれを行い,注入のたびにシリンジを引いて動脈血の逆流が無いかを確認するなどして,バイオアルカミドを動脈に注入していないことを確認
する義務があるが,被告元神医師は漫然と,何ら確認することなく原告の亀頭にバイオアルカミドを注入し,これによって動脈を閉塞して組織壊死を来したものであるから,その過失(以下「本件手術手技上の過失」という。)は明らかである。
ウ 不適切な術後処置の過失
原告は,本件手術後最初の診察日である平成27年10月31日において,既に内出血,黒色変色,圧痛を認めていた。また被告元神医師自身が,壊死の可能性を指摘していた(甲 A1・9頁)。組織壊死は,一度生じてしまったら,これを元通りに復元することは不可能であり,その可能性に気がついいた段階で可及的速やかに動脈の血流を確保し,組織の壊死を防ぐ手段を講じる必要がある(甲B7・310頁,315頁Table S4)。
被告元神医師は,平成27年10月31日から同年11月18日の3週間にかけて,亀頭のマッサージ,ヒアルロニターゼの皮下注射,プロスタグランジンの静脈注射,プロスタグランジン軟膏の処置などを行っている。これらに多少の効果があることは否定しないが,全く十分なものではない(甲 B7・310頁,3 1 5頁 Table S4 参照)。被告元神医師は,組織壊死に対して,甲B7(310頁,315頁)記載の様々な緊急的,集中的処置が必要なことを知らず,単に比較的有名な代表的処置のみを,その効果が出ているかいないかも評価せず,漫然と行ったと考えられ,その過失(以下「本件不適切な術後措置の過失」という。)は明らかである。
エ 外部医療機関への紹介が遅延した過失
被告元神医師は,平成27年10月31日には壊死の可能性に気がつき(甲A1・9頁),平成27年11月4日には平塚市民病院の血管外科・形成外科の医師に照会する必要性を了承された。(甲A1・11頁)。原告に横浜市立市民病院への紹介がなされたのは、平成27年11月18日になってからである。この間,被告元神医よる原告の治療を行っていたことは否定しないが,その治療は全く不十分なものであり,かつ成功していなかった(甲A1・9頁ないし21頁)。被告元神医師は,遅くとも,組織壊死という重篇な合併症が進行し、かつ自らの手には負えないと分かった平成27年11月4日には,他の専門医療機関に原告を紹介して適切な洽療を求めるべき義務があったが,漫然とこれを怠り,平成27年11月18日まで何ら効果のない治療を続けたものであるから,その過失(以下「本件外部医療機関紹介遅延の過失」という。)は明らかである。
2 結果
本件説明義務違反の過失,本件手術実施決定の過失,本件手術手技上の過失,本件不適切な術後措置の過失及び本件外部医療機関紹介遅延の過失の結果, 原告は,亀頭の部分壊死を来し,亀頭は大きく変形・縮小し,尿線は上方に曲がって日常の排尿に大きな困難をきたす状態(以下「本件亀頭変形」という。)となった。今後の治療は困難とのことである(甲A2・4頁,5頁,10頁)。また,本件説明義務違反の過失, 本件手術実施決定の過失,本件手術手技上の過失,本件不適切な術後措置の過失及び本件外部医療機関紹介遅延の過失の結果,原告は過剰な回数のガス麻酔を施され,本件嗅覚障害を生じたものである。
3 因果関係
本件説明義務違反の過失がなく,組織壊死等の重篤な合併症の危険性が脱明されていれば,原告は本件手術を行わなかった。従って,本件説明義務違反の過失と,本件亀頭変形に因果関係があるとは明らかである。
本件手術実施決定の過失がなければ,そもそも組織壊死は発生せず,本件亀頭変形は生じなかった。従って,本件手術実施決定の過失と,本件亀頭変形に因果関係があることは明らかである。
本件手術手技上の過失がなければ,組織壊死は発生せず,本件亀頭変形は生じなかった。従って,本件手術手技上の過失と,本件亀頭変形に因果関係があることは明らかである。
本件不適切な術後措置の過失がなく,適切な術後措置がなされていれば,亀頭壊死が始まっていたとしても,より小さい範囲にとどめ,本件亀頭変形を尿線が変わる等の機能に大きな影響がない状態にとどめることができた可能性は高い。従って,本件不適切な術後措置の過失と,本件亀頭変形に因果関係があることは明らかである。
本件外部医療機関紹介遅延の過失がなく,迅速に適切な治療が行える外部医療機関への紹介がなされていれば,亀頭壊死が始まっていたとしても,適切な治療により,壊死をより小さい範囲にとどめ,本件亀頭変形を尿線が変わる等の機能に大きな影響がない状態にとどめることができた可能性は高い。従って,本件外部医療機関紹介遅延の過失と,本件亀頭変形に因果関係があることは明らかである。
これら過失は,いずれの一つがなくても,本件亀頭変形の結果を回避できたものであり,並立する。
同様に,本件説明義務違反の過失,本件手術実施決定の過失,本件手術手技上の過失及び本件不適切な術後措置の過失と,本件亀頭変形に因果関係があることは明らかである。
本件不適切な術後措置の過失がなく,適切な術後措置ができていれば,亀頭壊死が始まっていたとしても,より小さな範用にとどめ、本件亀頭変形を尿線が変わる等の機能に大きな影響がない状態にとどめることかできた可能性は高い。従って,本件不適切な術後措置の過失と,本件亀頭変形に因果関係があることは明らかである。
本件外部医療機関紹介遅延の過失がなく,迅速に適切な治療が行える外部医療機関への紹介がなされていれば,亀頭壊死か始まっていたとしても,適切な治療により,壊死をより小さい範囲にとどめ,本件亀頭変形を尿線が変わる等の機能に大きな影響がない状態にとどめることができた可能性は高い。従って,本件外部医療機関紹介遅延の過失と,本件亀頭変形に因果関係があることは明らかである。
これら過失は,いずれの一つがなくても,本件亀頭変形の結果を回避できたものであり,並立する。
同様に,本件説明義務違反の過失,本件手術実施決定の過失,本術手技上の過失等がなければ,原告は過剰な回数のガス麻酔まで受けることはなく,本件嗅覚障害を生じることはなかったものであるから,これら不法行為の過失と本件嗅覚障害の間に因果関係が存在することは明らかである。
上記のとおり,被告元神医師の過失によって,原告の本件亀頭交形及び本件嗅党障害の結果を生じたものであるから,被告元神医師の過失は不法行為を構成するものである(民法709条)。
第5 被告医療法人の不法行為(使用者責任)
被告医療法人は,被告クリニックの開設者であり,その業務に関して,被告元神医師を使用していたのであるから,被告医療法人は,被告元神医師に対して,指揮監督義務があったことは明らかである。
また,被告元神医師による原告の身体に対する侵害行為は,被告医療法人の事業執行についてなされたものである。
よって,被告医療法人は,原告に対して,被告元神医師の不法行為にて,使用者責任(民法715条)を負う。
第6 治療費等
被告が支出した治療費・交通費は以下の通りである。
(1)本件クリニック治療費
156万6000円(甲C1)
交通費2万1822円
合計158万7822円
(2)横浜市立市民病院
ア 治療費
5万0840円(甲C3)
イ 交通費
5760円(甲C4)ウ
合計
5万6600円
(3)医療法人社団ゆうあい会 ゆうあいクリニック
ア 治療費
6220円(甲C5)
(4)さいだ耳鼻咽喉科気管食道科クリニック
ア 治療費
1万5850円(甲C6)
(5)さくら薬局 横浜大倉山店
ア 薬剤費
2万9600円(甲C7)
(6)合計
(1)ないし(5)の合計は169万6092円である。
2 逸失利益
本件亀頭変形は,「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日本弁連交通事故センター 東京支部。以下「赤い本」という。)
後遺障害等級9級17号「生殖器に著しい障害を残すもの」として評価されるものである。
ア 基礎収入
6040万0000円(甲C8)
イ 労働能力喪失
後遺症害等級9級17号
35%
(生殖器に著しい障害を残すもの)
ウ 労働能力喪失期間
(ア)症状固定日 55歳
(イ)55歳の平均余命(平成26年男性簡易生命表)
27.68年
(ウ)(イ)の2分の1 13.84年
(エ) ライプニッツ係数 9.8986
計算6040万円x0.35x9.8986=2億925万6404円
3 慰謝料
本件亀頭変形によって,原告が受けた精神的損害は極めて甚大であり,その額は,以下の通り,748万0000円を下らない。
(1)入通院慰謝料
原告は,本件手術により,平成27年10月27日から平成28年1月5日の71日間,本件クリニック及び横浜市立市民病院への通院を余儀なくされたものであるから,入通院慰謝料としては,58万0000円が相当である。
2)後遺障害慰謝料
障害を残すものとして評価されるものであるから,
障害慰謝料として690万0000内が相当である。
(3)合計
(1)および(2)の合計は748万0000円が相当である。
4 弁護士費用
上記1ないし3の合計は2億1843万2496円であるから,
弁護士費用としてはその1割である2184万3249円が相当である。
5 合計
上記1ないし4の合計は2億4027万5745円である。
第7 結語
よって,原告は,①被告医療法人に対し,不法行為(民法715条)よる損害賠償請求権に基づき,金2億4027万5745円及びこれに対する平成27年10月27日から支払済みまで民法所定の年5分割合による遅延損害金の支払を,②被告元神医師に対し,不法行為(民法709条による損害賠償請求権に基づき,金2億4027万5745円及びこれに対する平成27年10月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,本訴に及ぶ。